Q&A

法律Q&A

~相続に関するQ&A ~

第1 相続の基礎Q&A

Q1相続人と法定相続分はどのように決まっているのですか?
A1
配偶者は常に相続人となります。
子どもがいる場合には、その子も相続人となります(第一順位)。
子どもがいない場合には、直系尊属(父母、祖父母等)が相続人となります(第二順位)。
子どもも直系尊属もいない場合には、兄弟姉妹が相続人となります(第三順位)
法定相続分は
(1) 配偶者と子が相続人である場合
子と配偶者の相続分は2分の1ずつです。
子が複数いる場合には、子の相続分は平等となります。
(2) 配偶者と直系尊属(父母、祖父母等)が相続人である場合
配偶者の相続分は3分の2、直系尊属(父母、祖父母等)の相続分は3分の1です。
(3) 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
配偶者の相続分は4分の3、兄弟姉妹の4分の1です。
Q2法定相続分は昔から変わっていないのでしょうか?
A2
被相続人(亡くなった方)が昭和23年1月1日~昭和55年12月31日以前に死亡していた場合には,
改正前民法の法定相続分の規定が適用されます。
法定相続分は以下のとおりです
相続人が…
配偶者と子の場合 配偶者1/3 子2/3
配偶者と父母の場合 配偶者1/2 父母1/2
配偶者と兄弟姉妹の場合 配偶者2/3 兄弟姉妹1/3
Q3相続人調査はなぜ必要なのですか,またどのようにすればよいのですか?
A3
相続人の調査をしないで遺産分割をし、後から新たな相続人が判明した場合、遺産分割の話し合いをやり直さなくてはなりません。
そのような事態を防止するために,被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本を取り寄せて,相続人は誰なのかを調査します。
Q4被相続人の遺した借金(債務)はどうなるのですか?
A4
相続人は、被相続人が遺した積極財産(プラスの財産)だけでなく、消極財産(マイナスの財産)も相続することになります。
例えば,被相続人が借りていた借金は勿論,被相続人が保証人になっていた場合には、相続人はその保証債務を引き継ぎます。
Q5被相続人の遺した積極財産と消極財産の金額がよくわからない場合にはどうしたらよいのでしょうか?
A5
限定承認をするのがよいと思われます
相続には,単純承認,限定承認,相続放棄の3つの種類があり,相続人は,被相続人の死亡(相続の開始)を知った時から3か月以内に,そのいずれかを選択する必要があります(民法915条1項本文)。
このうち,単純承認とは,相続人が,被相続人の権利義務を全面的に承継するものをいいます(民法920条)。
限定承認とは,相続人において,相続によって得た積極財産の限度でのみ被相続人の債務等を負担するという留保付で相続を承認するものです(民法922条)。  限定承認は,相続人が数人以上いるときには共同相続人の全員の共同でなければすることができないという難点があります(民法923条)。
相続放棄とは,全面的に遺産の承継を拒否する手続です(民法939条)。
被相続人の遺した積極財産と消極財産の金額がよくわからない場合には,単純承認をしてしまうと相続をすることにより損をしてしまう可能性があり,他方,相続放棄をしてしまうと,相続したほうが得だったという可能性があるので,共同相続人全員の同意が得られるのであれば,限定承認をするのがよいということになるでしょう。
Q6被相続人の死亡から3か月以上経っていた場合には相続放棄はできないのでしょうか?
A6
原則としてできませんが,例外的にできる場合もあります。
民法は,「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない」と規定しています(民法915条1項本文)。
しかし,これでは,相続開始を知った後3ヶ月経過後に消極財産が判明したという場合,相続人が思わぬ不利益を被ることがあります。
このような不利益を配慮し,相続開始から3ヶ月以上経過していても『相続財産が全くないと信じ、かつそのように信じたことに相当な理由があるときなどは、相続財産の全部又は一部の存在を認識したときから3か月以内に申述すれば、相続放棄の申述が受理される』という判断をくだした裁判例があります。

第2 遺産分割Q&A

Q1遺産分割はなぜ必要なのでしょうか?
A1
遺産分割をしなければならないという規制は特にありません。
しかし、相続税の軽減措置(「配偶者の税額軽減」,「小規模宅地等の評価減」など)の適用には遺産分割が必要となりますし,不動産の登記を特定の相続人に変更する場合には遺産分割が前提となりますので,遺産分割が必要なのです。また,被相続人名義の預貯金の解約払戻請求なども,遺産分割を経てからの方がスムーズです。
Q2被相続人名義の預貯金を解約(引出)をするにはどうしたらいいのでしょうか?
A2
被相続人名義の預貯金を解約(引出)するには,まず,被相続人の相続人が誰であるかわかるように全部事項証明書等(戸籍謄本,除籍謄本,改製原戸籍謄本等)を揃えることが必要になります。
その上で,相続人全員が相続人代表者を定めて,金融機関の指定する用紙に相続人全員がサイン(署名・捺印)して,相続人全員の印鑑証明書を添えた上で,金融機関に提出するという方法があります。
また,相続人間で話し合いができず,代表者を定めることができない場合には,家庭裁判所で調停を行い,調停調書を金融機関に持参する方法もあります。
さらに,金融機関に対して預金払戻請求訴訟を提起するという方法もあります。
Q3遺産分割は,相続税申告納付期限までにしなければならないのでしょうか?
A3
遺産分割に期限はありません。
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内とされていますが、これは税法上の期限であって、遺産分割そのものの期限ではありません。
Q4遺産分割はどのように行えばいいのでしょうか?
A4
相続人間の話し合いにより解決できる場合には,相続人全員が遺産分割協議書に署名・捺印すれば遺産分割は成立します
相続人間で折り合いがつかない場合,家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて,話し合いをすることになります。
遺産分割調停でも話し合いがまとまらない場合には,裁判官の判断で決定します(遺産分割審判)
Q5遺産の範囲に争いがある場合にも遺産分割はできるのでしょうか?
A5
できます。
遺産の範囲に争いがある場合,遺産分割協議や調停の場において,何が遺産に含まれるのかということを,相続人間で取り決めます。
しかし,もし取り決めをした当事者以外にも相続財産の範囲について利害関係を有する人が出てきた場合には,再度,その人を交えて取り決めをしなければならなくなる可能性があります。
相続人間で,何が遺産に含まれるかについて取り決めができない場合,遺産確認の訴え(遺産確認訴訟)において確定することになります。
なお,この遺産確認の訴えは,相続人全員を被告として訴えを提起しなければなりません。

第3 相続対策・遺言・遺留分Q&A

Q1相続対策として,借金をしてまで土地建物を購入しておくべきでしょうか?
A1
ケースによります。
相続税の計算に際しては,土地については相続税路線価,建物については固定資産評価額で計算され,実勢価格よりかなり低額になることが多くなっていますので,現金として遺産を遺すよりも,借金をして土地建物を購入することで相続税を安くすることは可能です。
しかし,ケースによっては,遺産分割が困難になるなどの弊害が生じることもありますので,一概に借金をしてまで土地建物を購入することが得策とはいえません。
Q2遺言書は作成しておくべきでしょうか?
A2
遺言書作成には,以下の2つのメリットがあります
(1) 遺産分割に伴う親族間の紛争を防ぐことができる
遺言書があれば、相続人全員で話し合う遺産分割協議・調停に持ち込まれる可能性が減りますので、無意味な紛争を未然に防ぐことができます。
(2) 自分の思い通りに相続させる財産を処分できる
遺産分割に自分の意思を反映することができます。
例えば,妻に全ての遺産を相続させるなどといったことも可能です。
ただし,他の相続人の遺留分について考慮せずに遺言を作成した場合には,遺留分減殺請求が起こされて,後々トラブルとなる可能性があります(Q5参照)
Q3遺言書において,遺言執行者を定めておくべきでしょうか?
A3
遺言執行者とは,遺言の内容を実現するために必要な行為や手続をする者のことをいいます。
遺言書において,遺言執行者を定めなくてもかまいません。
相続人が自分たちで手続きできるからです。しかし,遺言は,相続人間で利益が相反する内容もあり、相続人全員の協力がなかなか得られられない場合もあります。そうした場合には,遺言執行者を定めるのが賢明といえるでしょう。
Q4遺言書に遺言執行者が指定されていない場合にはどうしたらいいのでしょうか?
A4
遺言書に遺言執行者が指定されていない場合,家庭裁判所に対して遺言執行者の選任を申し立て,遺言執行者を選任してもらうことが可能です。
Q5遺留分を侵害する内容の遺言をしてもいいのでしょうか?
A5
遺留分を侵害する内容の遺言は無効ではありませんが,そのような遺言はの作成しないほうが無難です。
遺留分とは,一定の相続人が最低限相続できる相続財産の割合のことをいいます。
民法1028条は,「兄弟姉妹以外の相続人は,遺留分として,次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。」とし,
直系尊属のみが相続人である場合…被相続人の財産の3分の1
それ以外の場合…被相続人の財産の2分の1を遺留分として定めています。
例えば, 遺言者(=被相続人)の相続人として妻及び長男がいる場合に,遺言者が,遺産のすべてを妻に相続させるといった遺言をしたと仮定すると,長男は本来の法定相続分の1/2については,遺留分減殺請求を行うことができます。
その結果,長男は遺産の1/4(=1/2(法定相続分)×1/2(遺留分))を確保することができます。
無用な紛争を予防するため,遺留分を侵害する内容の遺言書作成は,できる限り行わないほうが無難といえます。
Q6特定の相続人に対して多くの遺産を分配するという遺言書の内容に納得できない場合,どうすればいいのでしょうか?
A6
遺留分を侵害する内容の遺言書が作成されているときには,遺留分減殺請求(民法1031条以下)を行うことが可能です(Q5参照)。
もっとも,相続人が遺言者(=被相続人)の兄弟姉妹である場合,その相続人には遺留分がないため,遺留分減殺請求はできません。
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